赤い会社に受かったが本文とは関係ない日記

「すいません、こーつにはこの電車で行けますか?」
熱海駅で西に向かう列車に乗っていると不意に尋ねられた。
見ると小学生くらいの女の子だった。
国府津かい?」
「こーつです」
ドアの上の駅一覧にある「興津」を指差しながらこーつと言っている。
「あー、これで行けるよ、おきつって読むんだけどね」
少女はお礼を言うと再び読んでいた本に目を落とした。
きっと冬休みで親戚の家にでも行くんだろう。
それ以上は特に気にせず開いた席に座って景色を眺める

三島駅で3分ほど止まっていると車掌が回ってきた。
少女はその車掌にどうやら「こーつ」へ行くか聞いたらしい。
逆方向と言われて慌てて列車から降りたところで止めに入る。
どうやらまだ「こーつ」だと思っていたようだ。
少女は再びお礼を言って本に目を落とした。
興津に着いてその子が降りていくのを確認してからはまどろみつつ西へ向かう列車を乗り継ぐ。

浜松駅で乗り継ぎの間に駅そばを食べて豊橋行きに乗り換える。
ホームに上がると既に列車はホームに入っていて席も埋まっているようだった。
仕方なく目の前のドアから乗り込むとドア端の席にさっきの女の子が座っている。
「え、あれ?興津で降りたんじゃ・・・?」
「興津で降りて浜松行きに乗ったんです」
どうやら乗り継ぐ駅が違っただけで結局同じ列車に乗ってたらしい。
聞くと中学1年生で東京から福井まで18きっぷで行くと言う。
自分も中学の時に似たようなことをやってたけど今でもやっているのかと驚いた。
というかこのご時世に女の子が一人で行くとはなかなか凄い。

そこから米原までは一緒に行動したけれどずっと喋り通しの子だった。
家のことやら学校のことやら、、話を聞いてるとずいぶん裕福な子みたいだったけど
なんで18きっぷだったんだろうか。
まぁ若い間にいろいろ経験を積むのはいいことだろう。
旅は道連れ世は情け、仕方なく18きっぷで移動したけれど久しぶりに楽しい旅になったのだった。