いつも通り4時に家を出て西に向かう。
とりあえずこの時間に辺りを散歩するのが日課になってるのだ。
これもいつも通り近くの交差点を渡ろうとしたところで声をかけられた。
「イイ先輩じゃないですか!」(イイの部分は本名ね)
振り向くとそこには同じ年くらいの女の子が、でも誰かわからない。
高校は帰宅部だったから先輩呼ばわりされるとしたら中学だ。
しかも女ってことは卓球部の時の後輩だろうか。
それをわざわざ憶えてるってことは昔付き合ってた子かもしれない。
・・と、10秒ほどで考えてその名前を呼んでみる。
まぁ間違ってても誰?って聞くよりはよっぽどマシだろう。
外した時の言い訳を考えてると「わー、憶えててくれたんですね?」とうれしそうな声。
まさか適当に言ったとは言えなくてとりあえずごまかす。
はっきり言って別人になってて声以外記憶と完全に違う。
昔はショートだったのに髪が伸びてて清楚な感じに。
それで話を進めていくと先月辺りから何度か見かけてたとのこと。
大学帰りのバスが着く時刻と同じ時間になってたらしい。
それで声をかけようか迷っていたそうだ。
「先輩も学校か何かですか?」
一瞬ウソをつこうかと思ったけどやっぱり良くない、
今の自分のことも素直に話してしばらく話し込む。
ひとしきり話が終わったところでしばらくの沈黙、
そろそろ切り上げようと思ったところで向こうが切り出してきた。
「そういえば今日ってバレンタインでしたよね」
自分には関係ないから気にしてなかったがそういえばそんな日だ。
つーかこう切り出されたらちょっと期待してしまう。
そうだね、と無難に返して次の反応を待ってみる。
「先輩・・あの・・これ」
目の前に包み紙に包まった四角い箱を渡される。
ちょっと期待はしてたけどまさかと思ってたいたから
『えええっ!?』と大げさに声を出してしまった。
話を聞くとこの時間なら会えると思って待っていたらしい。
「あの・・その・・・他にもらったりしました?」
なにその告白フラグ、とか心の中で突っ込みつつ無いと答えた。
「じゃああの・・・また私と・・・付き合いませんか?」
人間あまりに唐突なことが起こると思考が止まるってのは本当のようだ。
しばらく『え?えええっと・・』と繰り返す。
「ごめんなさい、やっぱり無理ですよね?」
こう言われたところで我に返って冷静に考える。
でもやっぱり急に答えるのも無理だから返事は1週間後に待ってもらうことにした。
周りも暗くなってきたから互いの携帯アドレスを交換して今日は解散。


・・・・・・信じられないような話だけどここまでのことは全てネタだ。